【皮膚科専門医の実感】水いぼ治療薬:ワイキャンス®を実際に使って感じること
水いぼ治療で見えてきた特徴と、難治性いぼ(尋常性疣贅)への新しい可能性
ーあおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院ー
「水いぼ治療を痛がって継続できない…」
「ピンセットで取るたびに泣いてしまう…」
「気づいたらどんどん増えている…」
「もうすぐ水遊びやプールの時期なのにどうしよう…」
皮膚科では、このようなご相談を非常に多くいただきます。
近年、日本でも水いぼ(伝染性軟属腫)に対して保険適応となった✨ワイキャンス®✨。
有効成分のカンタリジンは、アメリカでは以前から水いぼや尋常性疣贅(いぼ)の治療に使用されてきた薬剤であり、日本でも近年、水いぼ治療の新しい選択肢として使用できるようになりました。
なお、ワイキャンス®の作用機序や基本的な治療理論については、以前のコラムで詳しく解説していますので、そちらもご参照ください。
今回は、「実際にワイキャンス®を多数の症例へ使用してみて感じる印象」を中心に、女性皮膚科専門医の立場からまとめたいと思います。
また後半では、アメリカでは尋常性疣贅(通常のいぼ)にも適応があるという背景を踏まえ、当院ではご希望の方へ自費診療として行っている尋常性疣贅への使用経験についてもご紹介します。
ワイキャンス®は「塗る瞬間の痛み」がかなり少ない
これは実際に非常に大きなメリットだと感じています。
従来の水いぼ治療では、
・ピンセット除去
・麻酔テープ
・押さえながらの処置
などが必要になることも多く、「病院が怖くなってしまう」お子さまも少なくありませんでした。
一方、ワイキャンス®は、“塗る瞬間”の痛みがかなり少ないため、
・小さいお子さま
・処置へのの苦手意識が強いお子さま
でも導入しやすい治療法です。
実際に、「前より通院しやすくなった」「泣かずにできた」というお声も多くいただきます。
従来の摘除法も、年齢の低いお子様で未経験であれば処置可能なこともありますが、多数回になっていくと、
処置への受け入れがどうしても難しくなってしまい、継続治療が困難でしたが、ワイキャンス®ではそれが非常に少ないです。
一方で、「数時間後の痛み」は意外と多い
ここは多くの患者様を治療して感じる重要なポイントです。
「ワイキャンス®を塗ったときは大丈夫だったけれど、帰宅後は思ったより痛がった」というケースが割とあります。
ワイキャンス®は薬剤塗布後、表皮剥離作用による刺激症状が出ることがあり、特に、処置2-3時間後からヒリヒリ感などの痛みを強く訴えるお子さまがいらっしゃいます。
初めの予想では、アトピー性皮膚炎などのベースにバリア機能の低下を認める患者様の方が刺激が出やすいではないかと考えていましたが、意外とそうでもないようです。
医療側が処置後の刺激を心配していた患者様の方が痛みが少ないこともよくあります。
どのお子様も処置時は何ともありませんが、腋窩周囲に多発している方では帰宅後に痛みが出やすい印象です。
腰など摩擦が起きるところも訴えが多い部位です。
ワイキャンス®は塗布後に、基本的には1日程度しっかり置いてから薬剤を洗い流す方が治療効果が高いのは間違いありません。
しかし、当院では痛みが強い場合は我慢せずに早めに洗い流していただくようお伝えしています。
塗布時間が予定より短くてもしっかり改善する場合もあるので、帰宅後は柔軟に対応していただいております。
小児では、
・年齢
・痛みへの耐性
・皮膚の薄さ
・病変部位
・病変数
などで反応がかなり変わるため、水いぼ病変を広げないためにも“お子さまに無理をさせずに継続できる治療”であることが非常に重要です。
「典型的な水いぼ」には反応が良い
実際に多数例をみていると、モルスクム小体(ボディ)というウイルスと変性した表皮組織からなる白っぽい塊が明瞭な、
典型的な隆起した水いぼ、には非常に良い反応が見られます。
この場合は、しっかり水疱形成が起こり、内容物が自然に排出されやすいです。
逆に、
・でき始めの小病変
・ピークを越えつつある病変
では、やや反応が弱いです。
また、頻度は少ないものの、ワイキャンス®1回の塗布では消退しない場合もあります。
このように、水いぼだからと言って、全てにワイキャンス®が最適というわけではありません。
処置を行うべき病変と、今は適切ではない病変との見極めが大事です。
水疱が強く出る方もいる
ワイキャンス®により水疱がかなり強く出る方もいらっしゃいます。
大腿や上腕において、皮膚が柔らかく、はりのあるお子さんでは処置後の痛みや水疱が出やすいように思います。
前頸部では頻度が低いようですが、後頸部では水疱が大きく出る方もいらっしゃいます。
ただし、水疱が大きく出る方はその分しっかりと水いぼが消退します。
ワイキャンス®によるその他のデメリット
治療後に赤みや炎症後色素沈着がしばらく残ることがあります。
特に顔では、色素沈着や瘢痕リスクを考慮し、当院では基本的にワイキャンス®での処置は行っておりません。
(髪で隠れる額に対して処置のご希望が強い方には、行う場合があります。)
ワイキャンス®のメリットとしては「湿疹治療がしやすくなる」点が大きい
水いぼのお子さまは、
・汗疹(あせも)
・湿疹
・アトピー素因
・かき壊し
を伴っていることが非常に多く、「ウイルス感染」と「湿疹」という真逆の病態が混在しています。
湿疹には通常、
●ステロイドの外用薬
●ステロイドフリーの免疫調整作用のある抗炎症剤での治療
が必要になりますが、これらは水いぼを増やす方向に働いてしまいます。
それでも、水いぼは接触感染でうつっていくため、痒いことによるそう破行為を抑えることは非常に重要であり、それらの外用薬を使用せざるを得ない場合もあります。
湿疹も水いぼも、どちらも患者様は困っている、医療側も早くどうにかしてあげたいが、今まではどちらを優先すべきか悩ましい、ということが多々ありました。
その点、ワイキャンス®後に病変整理が進むことで、ステロイド等による湿疹治療もしやすくなるのは非常に大きなメリットだと感じます。
当院でも、自費治療薬の3A M-BF CREAM®で皮膚バリアを整えながら、
・湿疹治療
・かき壊し予防
・新規病変予防
を組み合わせ、総合的な皮膚状態の改善を目指しています。
ワイキャンス®よりも摘除の方が早い病変もある
ワイキャンス®は水いぼが多発している方、以前に摘除した経験が怖くて治療の継続ができない方にメリットの高い治療です。
しかし、単発に近い病変、ピークは超えつつあるけれど再発しそうで早めに処置が望ましい病変などでは、改めて摘除する方が確実です。
ワイキャンス®の表皮剥離作用があまり期待できない大型の病変や、表皮が厚い箇所には特にその様に感じます。
また、しっかり薬剤を塗布しても1回では取り切れない箇所もあります。
これらを踏まえると、治療の目的がはっきりと理解できる年齢で、少ない病変の方では、従来の麻酔テープを貼付後に摘除、という選択肢の方が有益です。
ワイキャンス®は「水いぼ」に対しては日本で保険適応です
総合的に考えると、患者様にとっても医療従事者側としても、「ワイキャンス®が水いぼに保険適応となった意義」は非常に大きいと感じています。
水いぼは感染症です。
放置してもいずれ治るから…とご自身だけの問題に留めずに、
『接触感染によりご家族や他人にもうつしてしまう』という病識をもち、感染を拡大しないためにも何かしらの治療や対策を行って頂きたいです。
現在、日本国内においてワイキャンス®は、水いぼ(伝染性軟属腫)に対する保険適応治療として使用されています。
当院でも、保険適応に則って、水いぼ治療には保険で治療しております。
一方、アメリカでは尋常性疣贅(通常の手足にできやすいいぼ)にも適応があります
ワイキャンス®は、アメリカでは水いぼに加えて尋常性疣贅(いぼ)にも適応があります。
しかし、日本では今回水いぼ(伝染性軟属腫)にしか保険適応となっていません。
そのため当院では、ご希望のある方に対し、尋常性疣贅には自費診療として治療しています。
”日本国内で尋常性疣贅にワイキャンス®を用いる場合、現在「自費診療」でのご案内となります。”
難治性いぼへの「新しい自費治療の選択肢」
尋常性疣贅では、
・液体窒素
・ヨクイニン内服や角質溶解剤の外用治療
などを長期間続けても改善が乏しいケースがあります。
当院では“何か月〜何年も治らなかった難治性のいぼの患者様”に最近、自費治療の一つとしてワイキャンス®を使用することがありますが、
・病変縮小
・肥厚(厚み)の改善
・ウィルス量の減少
を実感するケースが複数例あります。
これは、医療側だけでなく、患者さま自身も変化を感じやすい印象があります。
「今までの治療より断然効果を感じる!!」とおっしゃる患者様もいらっしゃいます。
・「液体窒素が苦手」
・「長期間治療しているのになかなか治らない」
・「別の治療選択肢を試したい」
という方にとって、ワイキャンス®は、難治性尋常性疣贅に対する新しい自費治療の選択肢になり得ると感じています。
尋常性疣贅では「削る」がかなり重要
水いぼと違い、尋常性疣贅では、強い水疱形成はでないケースが多いです。
これは尋常性疣贅のウィルスそのものが細胞増殖に働き、皮膚の下に下に潜り込み、皮膚表面を硬くする性質があるからです。
そのため当院では、ウイルス感染部位をなるべく露出させるように、事前に病変部を丁寧に削れるだけ削ることを重視しています。
この工程次第で反応性が大きく変わります。
逆に先に削っていないとワイキャンス®での効果は出づらくなります。
尋常性疣贅に対する足底のワイキャンス®治療は意外と痛い…
今まで難治だった患者様にさらなる効果を求め、しっかり病変部を削った後に治療を行うためか、
処置後の荷重が強くかかる部位のためか、
尋常性疣贅では足底に対するワイキャンス®での治療は、帰宅後に痛みの訴えが割と多いのが現状です。
しかし、その後の効果も高く認められます。
理論的に、壊死作用としては従来の液体窒素やモノクロロ酢酸での処置の方がよいのですが、
角質溶解剤やスピール膏とは違う作用機序としてのワイキャンス®による表皮剥離作用の効果は実際に良好です。
今後さらに期待される治療
「ワイキャンス®が水いぼに保険適応となった意義は非常に大きい」ものです。
特に、
・痛み
・通院ストレス
・処置への恐怖心
を減らせるメリットは大きいです。
個人的には、通常の尋常性疣贅、中でも難治な病変に対し、いずれは日本でも保険適応になることを望む治療法です。
ワイキャンス®について詳しく知りたい方へ
ワイキャンス®の、
・作用機序
・なぜ水疱ができるのか
・従来治療との違い
・基本的な注意点
については、以前のコラムで詳しく解説しています。
「まずは治療の基本を知りたい」という方は、ぜひそちらもご覧ください。
あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院の水いぼ・尋常性疣贅(いぼ)治療
あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院では、女性皮膚科専門医が、
水いぼ病変の活動性の程度をみるだけではなく、
・湿疹
・アトピー素因
・かき壊しまで含め、
総合的に皮膚を診察し、水いぼだけではなく、皮膚全体の改善を目指しています。
水いぼ治療では特に、
・「なるべく処置時の痛みを減らしたい」
・「水いぼがどんどん増える」
・「湿疹も悪化している」
という時に、
尋常性疣贅では今のところ日本では自費治療とはなりますが、
・「液体窒素を長期間行っているのになかなか治らない」
という患者様に、皮膚の状態を見ながら、様々な治療法をご提案しています。
水いぼ・尋常性疣贅(通常のいぼ)でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
監修医師
あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院 院長
つつみ みどり