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Herpes Simplex and Zoster
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ヘルペス(単純疱疹)とは

ヘルペス(単純疱疹)は「単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus:HSV)」によって起こる感染症です。
口唇や口の周りに水ぶくれができる「口唇ヘルペス」や、デリケートゾーンにできる「性器ヘルペス」などが代表的です。
風邪や疲れ、強い紫外線、ストレスなどで免疫力が下がったときに再発しやすくなります。

単純ヘルペスウイルス(HSV)の亜型

単純ヘルペスウイルス(HSV)はDNAウイルスで、1型(HSV-1)と2型( HSV-2)の2亜型に分けられています。

HSV-1型

口唇ヘルペスの主な原因です。顔面・上半身に感染しやすい傾向があります。
日本では成人の約70〜80%が感染しているといわれています。
多くは幼少期に、家族とのスキンシップや食器の共有、口移しなどでうつります。

HSV-2型

性器ヘルペスの主な原因です。

ヘルペス(単純疱疹)のポイント

  ・水ぶくれは痛みやかゆみを伴うことが多いです。
  ・感染力があるため、触った手で他の部位や他人にうつることがあります。
   特に傷口や粘膜の部分に触れないようにして下さい。
  ・単純ヘルペスウィルスは一度感染すると体内の神経節に潜伏し、免疫力が下がった時に再発します。
  ・抗ウイルス薬を早めに使うことで症状を軽くできます。

HSV-1 と HSV-2 の最新動向まとめ

感染率と傾向の変化

 ・世界的には50 歳未満の約 64% が HSV-1 に感染しており、約13% が HSV-2 に感染していると推定されています。
 ・特に HSV-1 の感染率は高く、成人の70~80%が感染している地域もあり、HSV-2 は若年層中心に広がっています。
 ・HSV-1 はもともと幼少期に口に感染しやすいウイルスでしたが、近年は 若年成人で性的接触によって
  性器に感染する HSV-1 が増加しており、その結果、HSV-2 ではなく HSV-1 が性器ヘルペスの原因になるケースも増えてきています。

HSV-1とHSV-2の共通点や違い

 ・HSV-1 は口唇や顔に強い感染傾向を持ち、HSV-2 は主に性器に感染します。
 ・遺伝子的には約 50% の相同性 がありますが、潜伏場所や再発パターン、臨床的症状には違いがあります。
 ・治療薬(後述)に対する感受性は両者とも同様です。

帯状疱疹とは

水ぼうそうのウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)が原因です。
子供の頃に水ぼうそうにかかった方は、そのウイルスが体の神経にひそみ、免疫が下がったときに再び活動を始めます。
これが「帯状疱疹」です。

症状は、体や顔の主に片側の神経の流れに沿って「ピリピリした痛み」や「赤い発疹・水ぶくれ」が出るのが特徴です。
特に顔に出た場合は、顔面神経麻痺(顔を動かしづらい)や耳鳴り、めまい、難聴のリスクがあるため、早めの治療が必要です。

治療について

ヘルペス(単純疱疹)と帯状疱疹は、どちらも「ヘルペスウイルス科」のウイルスが原因なので、使う薬は共通しています。
主に使われるのは抗ヘルペスウイルス薬(抗ウイルス薬)です。

代表的な抗ヘルペスウイルス薬(抗ウイルス薬)について

薬の種類主な商品名使い方特徴
アシクロビルゾビラックス®内服・外用・点滴最も古く安全性高い
バラシクロビルバルトレックス®内服体内でアシクロビルに変化、服用回数少ない
ファムシクロビルファムビル®内服体内でペンシクロビルに変化、血中濃度が安定
ペンシクロビルペンシクロビル®
(外用)
外用主に口唇ヘルペス外用
アメナメビルアメナリーフ®内服1日1回、耐性株にも有効、腎機能が弱い方でも使用できる

ヘルペス(単純疱疹)と帯状疱疹の治療の違い

単純疱疹(口唇・性器ヘルペス)の治療

 ・初感染時や再発時にできるだけ早く(症状が出たらすぐ)内服または外用します。
 ・再発を繰り返す場合、再発抑制療法PIT療法(Patient Initiated Therapy)を行うこともあります。
 ・軽症や発症からやや時間がたっている場合は、外用薬だけで治療を行います。

再発抑制療法とは

主に単純ヘルペスウイルス(HSV)の再発を繰り返す患者さんで、年に複数回再発する場合や、
再発のたびに生活の質が大きく下がる場合に行う治療法です。

抗ウイルス薬を少量、長期間(半年〜1年程度)毎日服用し、ウイルスの再活性化を抑えます。
治療中は再発が大幅に減少しますが、中止後は再発することもあります。

PIT療法(Patient Initiated Therapy)とは

再発の前兆症状(かゆみ・ピリピリ感・熱感)を患者さん自身が感じた時点で、すぐに抗ウイルス薬を内服する方法です。
医師があらかじめ薬を処方しておき、医師の指示のもと患者さんが自己判断で内服を開始します。
再発の早期段階で治療することで、皮疹の重症化や持続期間を短縮できるメリットがあります。
再発を繰り返し、発症時の症状が特に強い患者さんが適応です。

帯状疱疹の治療

帯状疱疹(VZV)はヘルペス(単純疱疹)のような頻繁な再発は少ないのですが、一度かかったら一生かからないわけではありません
免疫抑制状態や高齢者の方では再発することがあります
夏の猛暑による体力低下や年末年始での疲れ、季節の変わり目など、免疫力が落ちる場合に、罹患率があがります。

帯状疱疹の治療のポイント

 ・発疹出現から72時間以内に抗ウイルス薬を開始することが重要です(後遺症予防のため)。
 ・ヘルペス(単純疱疹)より投与量や期間が長くなります(原則7日間までの治療です)。
 ・痛みが強い場合は鎮痛薬(NSAIDs、神経障害性疼痛治療薬)を併用します。
 ・現在は内服薬で治療が行える場合が多いのですが、高齢者の方や免疫抑制状態の患者さんでは点滴が必要なこともあります。

治療期間の目安

疾患内服期間備考
口唇ヘルペス5日間外用の場合も5日間程度
性器ヘルペス初感染 7〜10日、再発 5日間再発抑制療法は数か月〜数年
帯状疱疹7日間(重症例のみ延長)72時間以内の開始が重要

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹後神経痛とは

帯状疱疹は急性期の炎症が落ち着いたあとも、神経のダメージが残り、長くつらい痛みが続くことがあります。
これを「帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia:PHN)」といいます。
衣服や風が触れるだけで痛いというアロディニアという症状や、しびれや感覚鈍麻を伴うことがあり、
生活の質に大きく影響します。
強い痛みで全く寝付けなくなり、神経ブロック治療が必要となる方もいらっしゃいます。
PHNは特に50歳以上で帯状疱疹にかかった方に起こりやすい傾向があります。

帯状疱疹後神経痛を予防するためのポイント

 ・状疱疹は早期治療が大切です。(発症後72時間以内の受診が理想的です。)
 ・帯状疱疹に罹患した初めの段階で痛みのコントロールを十分に行っておく必要があります。
 ・ワクチン接種で予防効果が期待できます。

帯状疱疹ワクチンについて

帯状疱疹の予防には2種類のワクチンがあります。

帯状疱疹ワクチンの比較

種類効果接種回数持続期間副反応
弱毒生ワクチン約50%1回約5年発疹・かゆみ
不活化ワクチン(シングリックス®)約90%以上2回(2回目は初回投与から2〜6か月後)約9年以上
(11年以上の報告もある)
注射部位の腫れ・発熱

特に50歳以上の方や、免疫が下がりやすい方には不活化ワクチンが推奨されます。
ワクチンにより重症化を防ぐ効果も期待できます。
現在、帯状疱疹ワクチン接種に関しては、杉並区に住民登録をされている満50歳以上の方は、区からの助成が受けられます。
あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院では上記2種類のワクチン接種を行っております。
ホームページのお知らせの欄にも掲載しておりますので、ご参照ください。


ヘルペス(単純疱疹)や帯状疱疹について、気になる症状がある方、ワクチン接種をご希望の方は
どうぞお気軽にご相談ください。

監修医師

あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院 院長

つつみ みどり