
Insect bites, etc.
虫による皮膚疾患
保険診療 /
虫刺され(虫刺症)とは
虫刺され(虫刺症)は、蚊・ノミ・ダニ・ブユ(ブヨ)・アブ・ハチ・ムカデ・クラゲなどに刺されたり咬まれたりして起こる皮膚炎です。
最近では、トコジラミによる被害も増えています。
虫による皮膚炎は、単に「毒」が原因となるだけではなく、虫の唾液中に含まれるタンパク質や酵素に対するアレルギー反応として起こります。
同じ虫に刺されても、人によって症状が軽い方と強く出る方がいるのはこのためです。
年齢や体質、刺された部位によって反応が異なります。
一般的に高齢者に比べて小児の方が痒みや腫れが強く出やすく、掻き壊しによる「膿痂疹(とびひ)」や「痒疹」へ発展することがあります。
蜂に刺される場合はアナフィラキシーショックを生じることもあり、注意が必要です。
肉眼上で原因が特定できる虫の種類は限られています。
主な虫と特徴的な症状
蚊

刺されやすい部位:腕・足などの露出部に多くみられます。
症状:赤く盛り上がった皮疹と強い痒みを伴います。水疱(水ぶくれ)になる場合もあります。
アレルギー体質の方や小児では腫れが長引きやすいです。
蚊に刺されやすい条件:夏・水辺・夕方・夜間>昼
蚊は5月頃から発生し、夏~初秋(7〜9月)がピークです。
湿度が高い環境を好み、水たまり、植木鉢の受け皿、側溝など「水のある草むら」の近くに生息しています。
雨の日は蚊が室内に入りやすいので窓や玄関の開け閉めに注意しましょう。
室内には洗面所、玄関、観葉植物の周囲など、蚊にとって居心地の良い環境が存在します。
また、雨上がりは蚊の幼虫であるボウフラが一気に発生しますので、ベランダ周囲に水をためないようにしましょう。

~蚊に刺されやすい血液型~
血液型によって蚊の刺されやすさに違いがあることが研究で報告されています。
1位:O型 2位:B型 3位:AB型 4位:A型
蚊はヒトや動物が出す汗や呼気の二酸化炭素量が多いとき、また体温が高いとき吸血源を探しますが、
ヒトの皮膚表面の糖鎖抗原を感知しても寄ってくることが分かっています。
O型の人は表面抗原の糖鎖が蚊に「認識されやすい」ため刺されやすい傾向があり、次いでB型、AB型、A型の順とされます。
ヒトや動物を刺すのはメスの蚊だけです。蚊のオスとメスはともに普段は「花の蜜」や「植物の汁」を栄養源としていますが、
メスは産卵のために多量のタンパク質が必要になるため、吸血を必要とします。
ブユ(ブヨ)
ブユは蚊のように刺すのではなく、咬むことで皮膚組織を壊して血液を舐めるため、蚊よりも赤く腫れて痛みが出やすく、痕も残りやすいです。
集団でふわふわと飛んでいることは少なく、単独または少数で襲ってきます。
咬まれやすい部位:ふくらはぎ・足首など、川や山で皮膚を露出した部分に見られます。
症状:咬まれると激しい痛み・強い腫れが出て、水ぶくれや色素沈着が長引くこともあります。
ブユに刺されやすい条件:春〜初夏・山間部・朝夕・曇りや小雨
ブユは春〜初夏、特に 5〜6月が多く、涼しい山間部や渓流沿いに多く生息しています。
朝と夕方 が活動のピークで、昼間の直射日光の下では少なく、曇りや小雨の日に活発です。
春〜初夏の山・川・キャンプ場などの森林地帯、特に渓流や湿った草地では注意しましょう。
夕暮れに集団で飛んでくる小さい虫の正体って何?

→多くの場合は 『ユスリカ』です。蚊に似ていますが、刺しません。
川や水辺に発生しやすく、夕方に集団飛行をします。
人の頭の上に群がるのは、体温や二酸化炭素に反応しているからです。
ただし、ユスリカの死骸や体の粉、排泄物はアレルギー症状を引き起こし、アレルギー性鼻炎や喘息発作の原因となります。
ノミ

原因:犬猫が外から持ち込むことが多く、室内飼いでも完全には避けられません。
刺されやすい部位:ノミはベッドの下など低い場所で多発するため、足首・すね・ふくらはぎに好発します。
症状:赤く小さなブツブツが帯状に並び、強い痒みを伴います。
注意点:ペットにノミが寄生すると、人も繰り返し刺されます。
市販のシャンプーでは不十分なため、動物病院で駆除薬を処方してもらうことが重要です。
ダニ
室内で皮膚炎を起こすダニは人を刺すか刺さないかで大きく2つに分かれます。
●ヒョウヒダニ(コナヒョウダニ・ヤケヒョウダニ)やチリダニ:人は刺しませんが、死骸や糞がアレルギー・喘息の原因になります。
●ツメダニ・イエダニ:人を刺し、強い痒みを伴う皮疹の原因です。
刺されやすい部位:ウエスト周り・太もも・二の腕などの衣服で覆われた部分です。
室内で皮膚炎やアレルギー反応に関わるダニの種類と違い
項目 | コナヒョウダニ | ヤケヒョウダニ | チリダニ | イエダニ (ツメダニ) |
---|---|---|---|---|
刺すかどうか | 刺さない | 刺さない | 刺さない | 刺す(咬む) |
大きさ | 約0.2〜0.3mm | 約0.2〜0.3mm | 約0.2〜0.3mm | 約0.3〜0.5mm |
生息場所 | 粉類・乾燥食品(小麦粉・パン粉・お好み焼き粉など) | 布団・枕・カーペット・家具のほこり | 家屋内のほこり、家具寝具、フケや微生物が多い場所 | 家屋内の寝具・家具、ペット、ネズミ周辺 |
繁殖条件 | 微量の湿気がある粉類で繁殖 | 高湿度のほこり・布団に多い | 高湿度・ほこり多い環境 | ペットやネズミに寄生、夜間活発 |
健康への影響 | アレルギー反応(鼻炎・喘息・湿疹) | アレルギー反応(鼻炎・喘息・湿疹) | アレルギー反応(鼻炎・喘息・湿疹) | 刺咬による痒み・赤み・腫れ、まれにアレルギー反応 |
皮疹が出やすい部位 | 粉に触れた手指などに湿疹が出ることがある | 布団や衣類が接触する部位(背中・腕・脚など) | 全身、ほこりが接触する部位(腕・脚など) | 被服部位に多い(腰回り、足首・下腿、ペット接触部位) |
予防・対策 | 粉類は密閉容器で保存、開封後は早めに使用 | 布団・家具の掃除、布団カバー・定期丸洗い | 掃除・換気、布団や家具の洗浄 | ペット駆除、寝具の洗濯、ネズミ駆除や侵入防止、重度は専門業者依頼 |
トコジラミ

(トコジラミ)
近年増えており、注意が必要な吸血性の寄生虫です。
しらみという言葉がついていますが、しらみではなく、南京虫(ナンキンムシ)というカメムシの仲間です。
トコジラミに刺されると、眠れないくらいの激しいかゆみやアレルギー症状を伴います。
トコジラミは繁殖力が高く、殺虫剤に耐性がある種類の虫もいるため、非常に厄介です。
畳やカーペット、寝具、家具やカーテンの隙間など暗くて狭い場所を好みます。
成虫は長くて18ヶ月間も生息し、一日で5〜6個の卵を産むため、放置すると大量に繁殖してしまいます。
最近、増えている理由は、海外からの荷物にまぎれこんだトコジラミがトラック内で広がり、
段ボールを介して家の内部に持ち込まれるケースが増えたこと、
殺虫剤が効かないタイプの虫が増えたこと、などです。
トコジラミは夜行性であるため、就寝中に露出している肌を刺すことが特徴です。
首の後ろに症状がある場合は、ダニよりもトコジラミの可能性が考えられます。
皮膚症状に対しては早急に皮膚科を受診して下さい。
また、駆除のためには家庭用殺虫剤では難しく、専門のシロアリ・害虫駆除業者へ依頼する必要があります。
暑くて湿度が高くなる時期はトコジラミが活動しやすくなります。
ダンボールなどの荷物は玄関先で開封、そのまま処分し、なるべく室内に持ち込まないように気を付けましょう。
ダニとトコジラミの皮疹の違い
項目 | ダニ(ツメダニ・イエダニ) | トコジラミ(南京虫) |
---|---|---|
皮疹の形 | 赤い小さな丘疹、点状に散在することが多い | 赤い発疹が線状・帯状に並ぶのが特徴(刺された順に並ぶ) |
かゆみ | 強いかゆみが出やすい | 非常に強いかゆみ、夜間に悪化することが多い |
刺されやすい部位 | 腰回り、太もも、脇腹など衣服で覆われる部分 | 就寝中に露出した腕・足・背中 |
発生条件 | ネズミが媒介、家屋内、寝具・カーペット、家具など | ベッドやソファ、段ボール、旅行先の宿泊施設 |
数 | 単発〜数個 | まとめて数個〜十数個並ぶことも |
持続時間 | 数日で消えることが多い | 1週間以上残ることもある |
マダニ

(マダニ)
マダニはダニの一種で、ヒョウダニやイエダニとは違い、草むら・森・庭など屋外を中心に生息します。
マダニ咬傷は吸着して起こる皮膚炎です。犬の散歩の際に草むらに入って刺咬されることもあります。
マダニが皮膚の表面を這っても、人間はほとんど何も感じません。
マダニが吸血するとみるみる虫体が膨らみます。真っ黒なできものが肉眼で見えるようになって、はじめて咬まれたことに気づくケースが多いです。
私は九州出身なので、マダニに体中を刺された患者様を何回か診察しました。
「いきなりイボが多発しました。」との訴えで外来に来られた患者様の体中に認めたイボ(とご本人が表現されたもの)の正体は、
すべて、吸血して大きくなったマダニでした。
マダニ咬傷はマダニが皮膚にくっついた状態で診察することが多いため、原因が特定できる唯一の虫刺されです。
マダニは無理やり引っ張って取ろうとしてはいけません。
口器が皮膚内部に残り、皮膚が異物を取り囲む反応を起こして硬くなります。
アルコールやワセリンなどで密封し、虫を十分に窒息させてから取り除きます。
口器が皮膚内部に残る場合は、メスを用いて皮膚ごと切除する必要があります。
マダニが怖い点は、マダニに媒介される感染症(ライム病、日本紅斑熱、ツツガムシ病、血小板減少性重症熱症候群など)を引き起こす可能性があることです。
また、マダニによって獣肉アレルギー(牛肉など)が発生することが分かり、近年非常に注目されています。
ハチ
種類:スズメバチ・ミツバチ・アシナガバチなどです。
症状:通常の刺され方ではかゆみ・痛み・腫れを伴う赤い皮疹が出ます。
2回目以降はアナフィラキシー反応(全身性アレルギー)を起こす危険が高いため、特に注意が必要です。
刺された後に全身の蕁麻疹、痒み、呼吸困難・ふらつきなどがあればすぐに救急要請をして下さい。
*エピペン®(アドレナリン自己注射)を処方する場合があります。
エピペン®とはアナフィラキシー症状が出た際に、即座に使用する救急薬です。
・作用:血管を収縮させて血圧低下を防ぐ/気道の腫れを軽減し呼吸を助ける/心拍数を上げてショック状態を改善するなど
・使用の目安:蜂刺され後に呼吸困難、喉の違和感、声がれ、全身にじんましん、痒み、めまい、意識の低下などがある場合すぐに使用します。
その後必ず救急要請をして、病院で観察が必要です。
ムカデ
刺されやすい部位:布団の中や靴の中に潜んでいて足や手が咬まれることがあります。
症状:激しい痛みと腫れ、水ぶくれが出ます。発熱や全身症状を伴うこともあります。
対処法:冷やす方法と温める方法が議論されています。
ムカデ毒は熱で失活するため、40〜45℃の湯で温めるのが有効ともされますが、
腫れや炎症が強い場合は冷やした方が楽なこともあり、一般的には冷却するケースが多いです。
クラゲ
刺されやすい部位:海水浴やサーフィン中、磯・岩場で腕・足・体幹を刺されます。
刺されやすい条件:夏~初秋の昼間~夕方、特に海水温が上がる時間帯に多いです。
症状:ピリピリとした痛みと赤いミミズ腫れのような皮疹が出ます。
対処法:擦らずになるべく海水で洗って冷却して下さい。真水では洗わないで下さい。
クラゲの刺胞(毒針細胞)が真水で刺激され、逆に毒が追加で放出されると言われています。
〇サーファーとクラゲの関連:サーファーは夏から秋にかけて長時間海に入るためクラゲ刺傷が多い職業的リスクがあります。
さらに一部のクラゲ毒に含まれる酵素は、納豆菌(ナットウキナーゼ)と交差反応を起こす場合があり、
クラゲ刺傷歴のある方が納豆を食べた際にアレルギー反応を起こす例が報告されています。
サーファーに「納豆アレルギーが多い」と言われるのはこの関連によるものです。

虫刺されの治療法
皮膚科では、症状の程度や虫の種類によって次のような治療を行います。
●痒み・赤みに対して:ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬の内服を基本とします。
●強い腫れ・痛みがある場合:上記に加えて鎮痛薬の内服を行います。
●感染を伴う場合:抗菌薬の外用または内服を行います。
●アナフィラキシーを起こすリスクがある場合(ハチなど):救急対応が必要です。
過去に重症の症状があった方にはエピペン®の処方を検討します。
●繰り返す虫刺されや痒疹:生活環境の改善が必要です。(害虫駆除・寝具対策などの指導)
ここからは厳密には虫刺されではありませんが、虫による皮膚疾患をご紹介します。
『線状皮膚炎』

(アオバアリガタハネカクシ)
「アオバアリガタハネカクシ」という甲虫がもつ体液が人の皮膚に付着することで皮膚炎を生じます。
夏に線状の赤く腫れた皮疹を生じ、痛みを伴う場合が多いです。
これは特徴的な皮疹のため、虫関連の中では数少ない、原因を特定しやすい皮膚炎です。
『毛虫皮膚炎』

(サザンカ)
毛虫皮膚炎は毛虫に刺されていなくても起こります。日常診療でよくみる疾患です。
「チャドクガ」という毛虫が関係しています。
チャドクガは成虫になると蛾ですが、幼虫の時は長さ0.1mmの毒針毛と呼ばれる毛を50万本も身につけており、
風などにより舞ってきた毛が皮膚に触れることで湿疹を引き起こします。
腕などの露出部位から始まる鮮紅色で強い痒みを伴う均一なサイズの湿疹が多発するのが特徴です。
チャドクガは梅雨の前後、6月頃と9-10月の年2回、発生します。
ツバキ、サザンカ、チャノキの葉をえさとしているため、これらの名所が多い都内でもよく見かける皮膚炎です。
虫関連の皮膚炎は急性の症状が出るため、強い痒み、赤い腫れ、痛みを伴いやすく、掻き壊して悪化させないためにも早急な治療が必要です。
お困りの方はご相談ください。
監修医師
あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院 院長
つつみ みどり