【皮膚科専門医・美容皮膚科監修】ビタミンA完全ガイド~第二弾~|美肌・ニキビ改善の効果を徹底解説

第一弾では、主に全身に関わるビタミンAについて、記載しました。
第二弾では、特に”皮膚”へビタミンAの働きについて、解説します。

ビタミンAと美肌・ニキビ治療
なぜ肌の治療ではビタミンAが鍵となるのでしょうか?説明していきます。
ビタミンAは、肌のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)を整える力をもつ美容成分です。
医療の現場でも、ニキビ治療や美肌治療の代表的な有効成分として長年使われています。
ビタミンAのはたらき
ビタミンAの肌への効果
○毛穴の詰まりを防ぎ、ニキビの予防・改善します。
○メラニンの排出を促し、シミや色素沈着を薄くします。
○コラーゲン産生を高め、ハリや弾力をアップさせます。
○肌のきめを整え、透明感を出します。

スキンケアでのビタミンA
化粧品や外用薬に配合されるビタミンA誘導体(レチノールなど)は上記のような効果によって、透明感の高い”✨卵肌✨”を目指せる成分です。
肌はビタミンA誘導体を最終的に「レチノイン酸(トレチノイン)」の形に変えて作用させます。
変換のステップが少ないほど効果は強くなりますが、その分、赤み・皮むけなどの刺激も増えます。
レチノイド(ビタミンAやその誘導体の総)は以下のように大きく2系統に分かれます。
○天然型レチノイド系(スキンケア~医薬品)
パルミチン酸レチノール → レチノール → レチナール → レチノイン酸(トレチノイン)

○合成レチノイド系
アダパレン(保険診療でのニキビの外用薬:ディフェリン®ゲル)
天然型レチノイド系の比較
・パルミチン酸レチノール:一番肌への負担がマイルド😊効果はゆるやか。
・レチノール:効果と刺激のバランスが良い✨
・レチナール:即効性が高い!!やや刺激あり。
・トレチノイン:直接的な作用をもつ。効果は絶大!!✨赤み・皮むけも強い💦
なお、合成レチノイド系のアダパレンはレチノイン酸受容体(RAR)に直接結合して作用します。
化学構造が安定していて、光や酸素に強く、刺激が比較的少ないのが特徴です。

レチノールっていう名前の成分が多いけど、どう違うの?

レチノールには、「パルミチン酸レチノール」「酢酸レチノール」「プロピオン酸レチノール」などの違いがあり、
レチノール分子の末端を脂肪酸や有機酸でエステル化した誘導体か否かで異なります。
これは安定性・肌への優しさ・効果発現のスピードに影響します。
これらの共通点
・元の構造はビタミンA(レチノール)です。
・皮膚で加水分解(エステル分解)されてレチノールに変換されてから働きます。
・エステル化する理由は、光や酸素で壊れにくくする(安定化)、刺激を減らす(マイルド化)、
製品の保存性の向上のためです。
レチノールの主な種類と特徴
成分名 | 化学的構造 | 特徴 | 安定性 | 効果発現 スピード | 刺激性 |
---|---|---|---|---|---|
パルミチン酸レチノール (Retinyl Palmitate) | レチノール+パルミチン酸 (飽和脂肪酸) | 最も安定・マイルド😊 低刺激で長期使用向き | ◎ | ゆっくり | 低い |
酢酸レチノール (Retinyl Acetate) | レチノール+酢酸 (短鎖脂肪酸) | 比較的安定 パルミチン酸より効果は少し早いい | ○ | 中 | 低〜中 |
プロピオン酸レチノール (Retinyl Propionate) | レチノール+プロピオン酸 (短鎖脂肪酸) | 刺激を抑えつつ比較的早く作用 海外の化粧品に多い | ○ | 中 | 低〜中 |
ビタミンAを使う際の選び方の目安は?
○敏感肌・初めて使う方🔰→ 『パルミチン酸レチノール』
○効果も安定性もバランスよく欲しい方👍 → 『酢酸・プロピオン酸レチノール』
○しっかり効果を出したい方 ✨→ 『ピュアレチノールやレチナール』
*ピュアレチノールってレチノールと何が違うの?

よく”ピュア”という点を強調した商品を目にします。
「ピュアレチノール(Pure Retinol)」とは、レチノールを他の物質と化学的に結合させていない、純粋な形であることを強調して呼んだ言葉です。
スキンケア製品では、レチノールを安定化するためにパルミチン酸レチノールやレチノールエステルに変えて配合することがあります。
それらは肌で酵素によりレチノールへ変換されてから作用します。
「ピュアレチノール」は、”直接”レチノールとして肌に届く成分であることを示しています。
安定性と刺激性
ピュアレチノールは効果発現が早くみられます✨一方で、光・酸素・熱に弱く、刺激も出やすく💦、
そのため製品化では、カプセル化技術や遮光・密封容器が必須です。
まとめると 「ピュアレチノール」=化学的に純粋なレチノールそのもの
「レチノール」=広義にはピュアもエステル型も含む総称、です。
*A反応とは・・・
ビタミンAの”A反応”は有名です。
ビタミンAを塗り始めて数日〜数週間のあいだに出る一時的な刺激症状です。
(ニキビ痕の赤みや、ピーリングの後に出る赤みとは違います。)

(A反応)
A反応の症状は?
〇赤み
〇乾燥、皮むけ
〇かゆみ
〇一時的なにきびの悪化
などです。
これらは薬が効き始める過程で皮膚のターンオーバーが急に促進されるために起こります。
対処法
数日~長くても2週間弱で落ち着くことが多いものですが、以下のようにスキンケアを行ってください。
●保湿をしっかり行いましょう。
←肌の表面の角質が薄くなっている状態ですので、化粧水では染みることが多いです。
クリームも肌への浸透性がよいため、この時は刺激が出ます。
なるべく”軟膏”タイプでしっかり保湿してください。
●刺激が強い場合は塗る回数を減らす、量を減らす、濃度を下げるなどで対応しましょう。
●腫れや痛みを強く伴う場合は外用を中止しましょう。
ビタミンAは、合う方には美肌を手に入れる最上級のスキンケア製品ですが、上記のようなA反応が起こる場合があります。
また、A反応なのか?、アレルギー性の接触皮膚炎(かぶれ)になっているのか?を見極める必要があります。
場合によってはビタミンAの外用を中止して、ステロイドの軟膏を短期間使用せざるを得ないケースもあります。
ビタミンAは、必ず医師の診察のもとに正しく使用してください。
経口イソトレチノインとは?
経口イソトレチノイン はビタミンA(レチノール)を体内で代謝した最終活性型の一つで、体全体に作用する「内服型」レチノイン酸です。
皮脂腺の働きを直接抑え、ニキビの根本的な原因のひとつである「皮脂の過剰分泌」を強力に減らします。
皮膚の角質が詰まりにくくなり、新しいニキビができにくくなります。

経口イソトレチノインの効果
○皮脂を減らす → 毛穴詰まりやアクネ桿菌の増殖を防ぎます。
○炎症を抑える → 赤ニキビ・膿ニキビを改善させます。
○再発しにくい肌に → 治療終了後も長期間効果が続くことが多いです。
「内服型」のイソトレチノインは、外用型より効果も副作用も強く、日本では医薬品未承認ですが、
アメリカやヨーロッパでは重症ニキビの第一選択薬として広く使用されています。
経口イソトレチノインの注意点
○口の渇きや肌の乾燥、唇の荒れがほぼ必発します。
○肝機能や脂質(中性脂肪・コレステロール)に影響することがありますので、定期的な血液検査が必要です。
○ビタミンAは催奇形性を有するため、妊娠・授乳中は絶対禁止です。また、服用中と終了後も一定期間は避妊が必要です。
あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院では、重症のニキビの患者様にのみ、経口イソトレチノイン薬であるアクネトレント®を自費で処方しております。
必ず医師の指導の下に、正しく内服して下さい。

経口イソトレチノインの『好転反応』ってなに?
イソトレチノインの好転反応という言葉に怖いイメージを抱いている方も多いかと思います。
「好転反応(初期悪化)」とは、イソトレチノインを内服し始めた初期に起こることがある反応です。
ニキビが一時的に増える(特に赤ニキビ・膿ニキビ)、小さな白ニキビが急に目立つようになる、
既にあるニキビが腫れて赤くなる、などの症状があります。
これは、イソトレチノインが毛穴詰まりを解消し、毛穴の奥にたまっていた皮脂や角栓を一気に排出させることや、
肌のターンオーバーを促進させ、潜んでいた病変が一気に噴き出すことによります。
開始1~4週間で出やすく、個人差はありますが、2~8週で落ち着くことが多いです。
せっかくニキビ治療をしているのに、かえってニキビがあふれ出てきてしまう…この非常につらい時期を乗り越え、
定期的な血液検査でも異常がなく、一定の期間の内服を続けられると、高い美肌効果が得られます。
*ニキビ治療でのイソトレチノインの内服は1クールとしての期間の目安が決められています。
血液検査や全身状態、女性では挙児希望の時期ではないかを確認のもと、場合によっては1クール終了後も
量や回数を調整しながら内服することもあります。
医師の診察がない状況下で慢性的に飲み続けないようにしてください。
日本でも有名なビタミンA配合のドクターズコスメ
日本でも有名なビタミンA配合のドクターズコスメには、エンビロン®(ENVIRON)やゼオ®スキンヘルス(ZO®Skin Health)があります。
エンビロン®とゼオスキン®はどちらもビタミンA(レチノール・レチナール・レチノイン酸誘導体)を主成分としたスキンケアブランドですが、
コンセプト・成分濃度・使い方にかなり違いがあります。
あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院ではゼオ®スキンヘルス(ZO®Skin Health)を取り扱っております。

詳しくは【皮膚科専門医・美容皮膚科監修】ビタミンA完全ガイド~第三弾~で解説します。
監修医師
あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院 院長
つつみ みどり