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【皮膚科専門医が解説】舌下免疫療法は何年効く?3年と5年の効果・ゾレア®治療まで

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あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院
皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科

日本人の「国民病」ともいわれるスギ花粉症

春になると多くの方が悩まされる スギ花粉症。🌸
現在、日本では花粉症の有病率は約40%前後と報告されており、患者数の多さから「国民病」とも呼ばれることがあります。
花粉症の原因にはさまざまな花粉がありますが、日本では特にスギ花粉が多く、花粉症の原因の約7割を占めるとされています。
この背景には、戦後の日本で建材確保のためにスギが全国的に植林された歴史があります。
現在、日本の人工林の約4割がスギ林とされており、樹木が成熟したことで花粉の飛散量が増加しました。
そのため、毎年2〜4月頃に大量の花粉が飛散し、多くの方がアレルギー症状に悩まされています。
長い方では1月~5月上旬頃までの4か月間も発症してしまう場合もあります。
今まで花粉症がなかった人でも、ある年から突然発症するということも起こり得ます。

こうした状況から、政府も花粉症対策として
  ・花粉の少ないスギへの植え替え
  ・無花粉スギの導入
といった対策を進めています。
ただし森林の更新には時間がかかるため、花粉量の減少が実感されるまでには数十年単位の時間(30年程度)が必要とされています。

本記事では
  ・舌下免疫療法の仕組み
  ・3年と5年の治療期間による効果の違い
  ・肥満細胞とアレルギー反応
  ・海外の舌下免疫療法
  ・ゾレア®治療の特徴
について、わかりやすく解説します。

花粉症はなぜ起こる?(肥満細胞の役割)

アレルギー反応で重要な役割を果たすのが、肥満細胞(マスト細胞)です。
肥満細胞は鼻粘膜・皮膚・気道などに存在する免疫細胞で、体内に侵入した異物に反応します。
花粉症では花粉が体内に入ると、この免疫反応が過剰に働き、アレルギー症状が起こります。

アレルギー反応とIgE抗体

花粉症では花粉に対して”IgE抗体”という抗体が作られます。
花粉が体内に入ると、免疫系はそれを異物と認識し、IgE抗体を作ります。
このIgE抗体が肥満細胞の表面に結合し、再び花粉が入るとヒスタミン・ロイコトリエン・プロスタグランジンなどの炎症物質が放出され、
 ・くしゃみ
 ・鼻水
 ・鼻づまり
 ・目のかゆみ
などの症状が起こります。

舌下免疫療法とは

花粉症の治療といえば
 ・抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)の内服
 ・点鼻薬
 ・点眼薬
など対症療法が一般的です。

一方で、体質改善を目指す治療として”舌下免疫療法”があります。
これはアレルゲン(原因物質)を少量ずつ体に取り入れることで
  ・IgE反応の低下
  ・IgG4抗体の増加
  ・免疫バランスの調整
を起こし、アレルギー反応を起こしにくい体質へ変化させる治療です。
スギによる花粉症の場合はシダキュア®、ダニによるアレルギー性鼻炎に場合はミティキュア®という薬があります。

舌下免疫療法の開始時期

スギ花粉症の舌下免疫療法は、花粉が飛んでいない時期に開始する必要があります。

日本ではスギ花粉の飛散は主に2月〜5月上旬のため、舌下免疫療法は通常5月末〜12月末に開始します。
花粉飛散シーズン中は症状が強く出ているため、暴露される量をいきなり増やすのは危険であり、新規開始は原則として行いません。
そのため、治療を希望される方は事前に血液検査などを準備したうえで、花粉シーズン終了後に本格的に医師に相談することが重要です。

舌下免疫療法の方法

舌下免疫療法では、スギ花粉のアレルゲンを含む薬を毎日舌の下に置いて服用します。
治療の流れは次の通りです。
  1  医療機関でアレルギー検査を行う
  2  初回は医療機関で服用
  3  30分ほど副作用がないか観察
  4  問題がなければ自宅で毎日服用
  5  初期量で副作用がなければ1週間後から維持量に増量する
薬は舌の下に置き、約1分保持したあとに飲み込みます。
服用後は5分ほど飲食を控える、激しい運動や入浴はしばらく避ける、ことが推奨されています。
難しく思えるかもしれませんが、実際にやってみると簡単ですぐに終わります。

舌下免疫療法は何年続ける?(3年と5年の違い)

舌下免疫療法は3〜5年間の継続が推奨されています。研究では下記のように報告されています。

治療期間効果持続の目安
約3年約7〜10年持続の可能性
約5年10年以上持続する可能性

舌下免疫療法ができない人

舌下免疫療法は比較的安全性の高い治療ですが、すべての方が受けられるわけではありません。
以下のような場合には、治療が行えない、または慎重な判断が必要となります。

① コントロール不良の喘息がある方

気管支喘息の症状が安定していない場合、舌下免疫療法によってアレルギー反応が強く出るリスクがあるため治療は行えません。
喘息が安定している場合は治療が可能なこともあるため、医師の評価が必要です。

② 重い免疫疾患がある方

自己免疫疾患や免疫不全など、免疫系の病気がある場合は、免疫療法の影響を考慮して慎重な判断が必要になります。

③ 治療を継続することが難しい方

舌下免疫療法は毎日内服を継続する治療です。3〜5年程度の長期間の治療になるため、
 ・毎日の服用が難しい
 ・定期的な通院ができない
場合は治療が難しいことがあります。

④ 妊娠中に新規開始する場合

妊娠中に新しく治療を開始することは一般的に推奨されていません。
しかし、妊娠中でも、すでに舌下免疫療法を行っていて症状が安定している場合は、医師の判断のもと継続できるケースもあります。

⑤ 重い口腔内の病気がある場合

舌下免疫療法は舌の下で薬を保持する治療のため、
  ・重度の口内炎
  ・口腔内の手術直後
  ・歯科処置直後
などの場合には、一時的に治療を中止することがあります。

舌下免疫療法が効かない人の特徴

舌下免疫療法は多くの患者さんに有効ですが、約20〜30%では効果が不十分とされています。
効果が出にくい要因として
  ・治療期間が短い
  ・花粉飛散量が非常に多い年
  ・複数のアレルゲン(ダニ・ヒノキなど)が関与
  ・重症のアレルギー体質
などが考えられます。

舌下免疫療法の副作用

舌下免疫療法では以下の副作用がみられることがあります。

副作用症状
口のかゆみ舌・口腔内の違和感
喉のかゆみ軽い刺激感
耳のかゆみアレルギー反応
軽い腹部症状まれに腹痛

多くは治療初期に出現し、数週間で軽減します。
前述の通り、喘息症状がある方には使用できず、喉の違和感がつらい場合は中止を検討します。

舌下免疫療法は何歳からできる?

舌下免疫療法は、5歳以上で治療が可能です。
上限年齢は明確に決まっておらず、全身状態が安定していればご高齢の方でも検討できます。

海外ではさらに多くの舌下免疫療法がある

舌下免疫療法はヨーロッパや北米でも広く行われています。

アレルゲン主な地域
イネ科花粉ヨーロッパ
シラカバ花粉北欧
ブタクサ北米
ダニ世界各国

日本では現在、スギ花粉とダニが主な対象となっています。

花粉症はなぜ増えている?

近年、花粉症は患者数が増加し、発症年齢の若年化も指摘されています。

その背景として
 ・都市化
 ・食生活の変化
 ・腸内細菌叢の変化
などが考えられています。特に幼少期の微生物接触が減ることでアレルギーが増えるという衛生仮説が知られています。

同じスギ花粉でも、都市部では症状が強く出やすい

都市部では車の排気ガスなどに含まれる ディーゼル排気微粒子 などの大気汚染物質が存在します。
これらの微粒子が花粉の表面に付着すると、アレルギー反応を強める可能性があると報告されています。
また都市部では、アスファルトやコンクリートが多いため、地面に落ちた花粉が再び舞い上がる、といった特徴もあり、花粉が空気中に長く残ることがあります。
このような環境要因も、都市部で花粉症が多い理由の一つと考えられています。

スギ花粉とヒノキ花粉の違い

日本の春の花粉症ではヒノキも原因になることがあります。

花粉飛散時期
スギ2〜3月
ヒノキ3〜4月

大体はスギ花粉症のピーク時期の後半である3月末頃に、1~2週間だけ一気にヒノキ花粉が飛散する年が多いです。
スギとヒノキは同じヒノキ科のため、両方にアレルギー反応を示す人も多いとされています。
シダキュア®によりスギ花粉症状が安定していた方もこの時期だけはアレルギー症状に悩まされることがあります。

重症花粉症の治療「ゾレア®注射」

重症の花粉症では、オマリズマブ(ゾレア®)という注射治療が選択されることがあります。
ゾレアは特発性慢性蕁麻疹の治療薬でもあり、IgE抗体そのものを抑える薬です。
アレルギー反応の上流を抑制します。

そのため
 ・重症の季節性アレルギー性鼻炎
 ・舌下免疫療法で効果不十分
などの場合に検討されます。
ゾレア®は非常に有効な治療ですが、どなたもすぐに受けられる訳ではなく、適応が厳密に決められている薬剤です。
使用の際には、開始前の血液検査(IgE測定)、症状の重症度、前年度に使用した治療薬などを細かに明記する必要があります。

まとめ

花粉症治療には
  ・内服薬、点眼薬、点鼻薬
  ・舌下免疫療法
  ・生物学的製剤(ゾレア®)
などさまざまな選択肢があります。
あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院(皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科)では、上記すべての治療法を取り入れています。
さらに、花粉の飛散に伴い、露出部位の特に顔が赤くなる方も多く、適切な外用治療をご提案しています。
舌下免疫療法は、3〜5年継続することで長期的な症状改善が期待できる治療です。
症状の程度に応じて、医師と相談しながら最適な治療を選択することが重要です。
花粉症🌸でお困りの方はご相談ください。

花粉症に関するよくある疑問・豆知識

北海道や沖縄ではスギ花粉症はないの?

北海道や沖縄では、スギ花粉症は本州に比べてかなり少ないといわれています。
北海道にはスギ林がほとんどないため、スギ花粉の飛散量は非常に少なくなります。
その代わり、北海道では”シラカバ”などの花粉による花粉症が比較的多くみられます。

また沖縄にはスギ林がほぼ存在しないため、スギ花粉症は非常に少ない地域とされています。
ただし、イネ科植物や雑草などによる花粉症はみられます。

~花粉症の豆知識~

① 花粉は”午後”のほうが多いことがある

花粉は朝に飛び始めますが、風によって拡散し、昼〜夕方にかけて濃度が高くなることがあります。
そのため、症状が午後に強くなる人もいます。

② 雨の”翌日”は花粉が多くなることがある

雨の日は花粉が地面に落ちるため、症状が軽くなることがあります。
しかし雨が上がった翌日は乾燥と風で花粉が再び舞い上がるため、花粉量が増えることがあります。
春は天候が変わりやすい季節です。雨の翌日の花粉症対策は万全にして下さい。

よくある質問(FAQ)

Q1. 舌下免疫療法はどれくらいで効果が出ますか?

個人差はありますが、早い方では1シーズン目から症状の改善を感じることがあります。
ただし、免疫反応が安定して変化するまでには時間がかかるため、一般的には2〜3年継続することで効果が安定するとされています。

Q2. 舌下免疫療法は途中でやめても大丈夫ですか?

1〜2年で中止すると、免疫の変化が十分に起こらず、効果が不十分になる可能性があります。

研究では、3年以上継続することで長期的な効果が得られると報告されています。
そのため、通常は3〜5年の継続治療が推奨されています。

Q3. 舌下免疫療法が効かない人もいますか?

舌下免疫療法は多くの患者さんで効果が期待できますが、約20〜30%の方では十分な効果が得られない場合があります。

その理由として
  ・花粉飛散量が非常に多い年
  ・ヒノキ花粉など他のアレルゲン
  ・重症のアレルギー体質
などが関係することがあります。

Q4. 舌下免疫療法は子どもでもできますか?

スギ花粉の舌下免疫療法は、現在5歳以上から治療が可能です。

花粉症は年齢とともに症状が強くなることも多いため、早い段階で治療を開始することで症状の悪化を予防できる可能性があります。

Q5. 舌下免疫療法をしていても花粉症の薬は必要ですか?

舌下免疫療法を行っていても、花粉の多い年や症状が強い場合には薬を併用することがあります。
一般的には
  ・抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)の内服
  ・点鼻薬
  ・点眼薬
などを組み合わせながら治療を行います。

Q6. 高齢になると花粉症は出なくなりますか?

年齢とともに免疫の働きが弱くなるため、花粉症の症状が軽くなることがあります。
しかし、若い頃から花粉症がある場合や、花粉への感作が強い場合などでは、高齢になっても症状が続くことがあります。

Q7. 重症の花粉症にはどんな治療がありますか?

通常の薬や舌下免疫療法で十分な効果が得られない場合、抗IgE抗体の注射治療が行われることがあります。
代表的な薬としてオマリズマブ(ゾレア®)があります。
ただし、適応条件や費用の面から、すべての患者様に使用できるわけではありません。

Q8. シダキュア®はヒノキ花粉にも効きますか?

舌下免疫療法で使用されるシダキュア®は、スギ花粉症に対する治療薬です。
ただし、スギとヒノキの花粉には似たアレルゲンが含まれているため、スギ花粉に対する免疫療法を行うことで、ヒノキ花粉の症状も軽くなる人がいると報告されています。

例えば、スギ花粉の主要アレルゲンであるCry j 1 や Cry j 2 は、ヒノキ花粉のアレルゲン(Cha o 1、Cha o 2)と構造が似ており、交差反応が起こることがあります。
そのため、舌下免疫療法によってヒノキ花粉の症状も改善する場合があります。
ただし個人差があり、シダキュア®を行っていても、ヒノキの時期にはアレルギー症状がつらい方の方が多いです。
現在のところ、日本ではヒノキ花粉専用の舌下免疫療法薬はまだありません。

Q9.舌下免疫療法を始めた年からすぐに花粉症は楽になりますか?

スギの舌下免疫療法では、スギ花粉のアレルゲンを少量ずつ体に取り込むことで、アレルギー反応を起こしにくい体質へと変化させることを目指します。
治療効果には個人差がありますが、治療を開始した最初の花粉シーズンから症状の軽減を感じる方もいます。
ただし、舌下免疫療法は体質改善を目指す治療のため、効果が安定してくるまでにはある程度の時間が必要です。
一般的には1〜2年で効果を実感する人が多く、3〜5年の継続でより安定した効果が期待されます。
そのため、開始した年は通常の花粉症治療(抗アレルギー薬など)を併用しながら経過をみていくことが一般的です。

Q10. 舌下免疫療法はやめたら元に戻りますか?

舌下免疫療法の効果には個人差があり、治療終了後に15年以上良好な状態が続く方もいれば、
  ・治療終了後も症状が軽い状態が続く人
  ・数年後に症状が再び出てくる人
などさまざまです。
もし治療終了後に花粉症状が再び強くなった場合には、舌下免疫療法を再開するという選択肢もあります。
すでに免疫がある程度花粉に慣れているため、再開後は比較的早く効果を感じることもあります。
治療の再開については、症状の程度や生活への影響を考慮し、医師と相談して決めることが大切です。

参考文献

日本アレルギー学会
鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会.
鼻アレルギー診療ガイドライン2020(改訂版). ライフサイエンス出版.

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
花粉症診療の手引き.

World Allergy Organization
Allergen Immunotherapy Position Paper.

European Academy of Allergy and Clinical Immunology
EAACI Guidelines on Allergen Immunotherapy.

Durham SR, et al.
Long-term clinical efficacy of grass-pollen immunotherapy.
New England Journal of Medicine. 1999.

Canonica GW, et al.
Sublingual immunotherapy: World Allergy Organization position paper.
World Allergy Organization Journal. 2014.

林野庁
花粉発生源対策に関する資料.

厚生労働省
花粉症対策に関する政策資料.

監修医師

あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院 院長

つつみ みどり