お電話 保険診療WEB予約 美容診療WEB予約

日焼け止めの正しい選び方と使い方②SPFとPAの正しい理解と紫外線防御成分について解説【皮膚科専門医監修】

NoImage画像

~敏感肌・赤ちゃんにも安心の製品選び~

紫外線対策は最高のアンチエイジング

紫外線対策の基本を知るうえで欠かせないのが、UVA・UVB・UVCの違いです。
前回のコラムでは、UVAはしわやたるみを引き起こす「生活紫外線」、UVBは赤くヒリヒリと焼ける「レジャー紫外線」であり、
どちらも皮膚老化や皮膚癌の原因になることをお伝えしました。

では、その紫外線から肌を守るために欠かせない 「SPF」と「PA」 は、実際どのような意味を持ち、どう使い分ければよいのでしょうか?
「SPF50だから1日中安心」「PA++++なら絶対に焼けない」――そんな誤解を持っている方も少なくありません。

紫外線対策の本当のカギは、SPFとPAを正しく理解し、自分の生活や肌質に合った日焼け止めを選ぶこと
さらに、日傘・帽子・サングラスといった物理的な遮光や、シーンに合わせた塗り直しも欠かせません。

今回のコラムでは、

  ・SPFとPAの正しい意味と限界
  ・紫外線防御成分(吸収剤・散乱剤)の違い
  ・物理的な紫外線対策の取り入れ方

について、皮膚科専門医の視点から分かりやすく解説していきます。
日焼け止めの効果を理解するためには、”防御指標”を知ることが大切です。

SPF・PAの正しい理解

SPF・PAとは?数値や「++++」はどんな違いがあるの?
SPFとPAの仕組み・効果・誤解されやすいポイントを、皮膚科専門医が丁寧に解説します。

      要点:紫外線の防御指標→「SPFはUVB対策」「PAはUVA対策」


SPF(Sun Protection Factor)とは?

 ・UVBを防ぐ力の指標です。
 ・日焼け止めを塗った状態で「どれだけ紅斑(日焼け)に耐えられるか」を示します。
  例)通常20分で赤くなる人がSPF10を使った場合 → 10倍の紫外線量(約200分)で赤くなる、ということです。
 ・注意点:「200分間効果が続く」という意味ではありません。汗や摩擦で落ちるため、こまめな塗り直しが必要です。
 ・国際性:世界標準で広く採用されている指標です。


PA(Protection Grade of UVA)とは?

 ・UVAを防ぐ力の指標です
 ・日焼け後すぐに肌が黒くなる「即時黒化」をもとに算出されています。
 ・PPD(Persistent Pigment Darke)

     PA+ :効果がある(PPD 2〜4)
     PA++ :かなり効果がある(PPD 4〜8)
     PA+++:非常に効果がある(PPD 8〜12)
     PA++++:きわめて高い効果(PPD12以上)


紫外線防御成分の種類

① 紫外線吸収剤(ケミカルサンスクリーン)

紫外線を吸収し、熱や無害なエネルギーに変換します。

 ・代表成分:オキシベンゾン、アボベンゾン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルなど。
 ・ウォータープルーフの製品に使われることが多いです。(後述)
 ・メリット:透明でなめらかな塗り心地で、白浮きしにくい利点があります。
 ・デメリット:敏感肌の方や赤ちゃんではかぶれやすいことがあります。

② 紫外線散乱剤(ノンケミカルサンスクリーン)

酸化チタン・酸化亜鉛などの微粒子が、紫外線を鏡のように反射・散乱してブロックします。

 ・メリット:低刺激性のため、敏感肌や赤ちゃんにも向いています
 ・デメリット:白浮きや粉っぽさを感じることがあります。

実際に市販されている日焼け止めの多くは、紫外線吸収剤(ケミカル)と紫外線散乱剤(ノンケミカル)を組み合わせた「ハイブリッドタイプ」です。
両方を組み合わせることで、散乱剤の利点である肌へのやさしさ・広い波長域の紫外線カットと、吸収剤の利点である強力な防御力・仕上がりの自然さを
バランスよく兼ね備えることができます。
こうした製品は、白浮きが気になるけれど肌荒れは避けたい方に向いています。

ウォータープルーフタイプと紫外線吸収剤の関係

ウォータープルーフタイプの日焼け止めは、水や汗に強いように設計されています。
そのため、油性成分やシリコン系成分 を多く配合し、肌表面にしっかりとした膜を作る処方が一般的です。

紫外線吸収剤(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オキシベンゾンなど)は脂溶性で、油性ベースに溶けやすいため、ウォータープルーフ製品では比較的使われやすい傾向があります。

ただし、「ウォータープルーフ=必ず吸収剤が多い」わけではなく、最近では紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛)主体のウォータープルーフ製品もあります。

ウォータープルーフタイプの独特の臭いの原因は?

「日焼け止め特有のにおい」を感じて、日焼け止めが苦手な方もいらっしゃいます。
あのにおいの成分としては以下が挙げられます。

●紫外線吸収剤のにおい
・特に有機系吸収剤は化学的に特徴的なにおいを持つことが多く、肌に塗ったときに独特の「ケミカル臭」として感じられます。

●油性ベース成分
・揮発性のシリコンや溶剤(アルコール類、イソドデカンなど)が蒸発する際に、独特のにおいを発することがあります。

●保存料や添加物
・パラベンやフェノキシエタノールなども微妙に薬品っぽいにおいを持つことがあります。

普段使いの日焼け止めは紫外線散乱剤が主成分なものを選び、ウォータープルーフタイプは長時間のレジャーの際、特にプールや海に行く場合などに
選択する、というように使い分けるのも良い方法です。肌が敏感な方はなるべく紫外線散乱剤を使用して下さい。

日焼け止めの種類と肌質別の選び方

  ・クリームタイプ:保湿力が高く、乾燥肌・敏感肌の方におすすめです。
  ・乳液・ローション・スプレータイプ:軽くて使用感がよいのが特徴ですが、添加物でかぶれやすい場合があります。
  ・ベビー用製品:必ずしも全員に安全とは限らず、肌に合うかどうか確認が必要です。

実際に様々なタイプの日焼け止めを試してみると、ローション、乳液タイプでは塗りムラが非常に出やすいと感じます。
また、スプレータイプは乾燥しやすく、クリームに比べると蒸発しやすいため効果が長持ちしません。
髪には最適な製品と考えます。

当院では、敏感肌の方が安心して使用できるか?効果は高いか?毎日使っても費用がかかりすぎないか?
使用感がよいか?においがしないか?を基準に日焼け止めを厳選しています。

エムディア(M-Dear®)、NOV®の一部、赤ちゃんに推奨のビューティフルスキン®など
すべて紫外線吸収剤を使わずに紫外線をカットするお肌にやさしい日焼け止めクリームを取り扱っております。


また、”飲む日焼け止めサプリメント”として有名なUブロック® もおすすめです。


物理的な紫外線対策も大切

日焼け止めだけに頼らず、物理的に紫外線を遮る工夫も効果的です。

  ・日傘や帽子:頭・顔・首への直射日光を防ぎます。
  ・UVカット加工の衣類:腕や足を覆うだけで紫外線量を大幅に減らせます。
  ・サングラス:紫外線は眼からも吸収され、白内障などのリスクになります。
  ・窓ガラス用フィルム:車や室内でもUVAは透過するため、フィルムでの対策が有効です。

これらと日焼け止めを組み合わせることで、最も確実に紫外線ダメージを減らすことができます。


日光との付き合い方:良い面と悪い面

紫外線は悪い側面ばかりではなく、適度な日光は皮膚でビタミンDを生成し、カルシウム吸収を助け、骨の健康を保ちます
また体内時計をリセットし、セロトニン分泌によって気分を安定させる効果もあります。

ただし必要な時間はごくわずかです。

適度な日光浴:1日5〜30分程度、顔や手のひらなどの皮膚が露出する部位を日光に当てることで、ビタミンDの合成が促進されます。
日本では皮膚の一部に日光が短時間当たるだけで十分です。むしろ紫外線を浴びすぎないように注意しましょう!!

一方、北欧のような高緯度地域では冬季の日照時間が極端に短くなるため、紫外線(UVB)がほとんど届かず、
ビタミンD不足によるくる病(小児)や骨軟化症(成人)が増えやすいことが知られています。

日光によるビタミンD合成の目安

日光浴でビタミンDを生成するには、皮膚の露出面積・時間・季節・緯度・肌色が大きく関係します。日本で一般的に参考になる目安は以下の通りです。(晴天時の目安)


季節
日光浴の目安補足
春・秋(UVB十分)顔・手・腕を10〜15分/日肌色が濃い人はやや長め
夏(UVB強い)顔・手・腕を5〜10分/日日焼けしすぎないよう注意
冬(北日本や北欧はUVBほぼゼロ)屋外での短時間日光浴では不十分サプリメントや強化食品で補う必要あり

日光浴のポイント

・肌色が濃い人はメラニンが紫外線をブロックするため、同じ時間ではビタミンDの合成量が少なくなります。
・高緯度・冬季では紫外線量が不足するため、日光浴だけで十分なビタミンDを作るのは困難です。サプリメントやビタミンD強化食品で補うことが推奨されます。
・ビタミンDは、魚類や卵黄、キノコ類などの食品からも摂取できます。バランスの取れた食事を心掛けましょう。
・皮膚科医の視点では、日光浴はビタミンD合成のために有効ですが、皮膚癌リスクとのバランスも考慮する必要があります。


Q1. 日焼け止めは毎日必要ですか?

→ はい。紫外線は季節や天候に関わらず、毎日、地表に降り注いでいます。カーテンを閉めていても窓越しに室内にも届きます
 雨や曇りの日、冬でも日焼け止めを毎日欠かさずに塗ることが望ましいです。

Q2.日焼け止めはクリームとローションのどちらがよいですか?

→塗り心地の面での好みに個人差があるかとは思いますが、皮膚科医の視点からは安全性を重視し”クリームタイプ”をお勧めします。

●クリームタイプ
保湿力が高く、ローションと比較すると、かぶれにくく効果が長持ちする特徴があります。(紫外線防御率が高い)
乾燥肌・敏感肌の方にもおすすめです。
製品によってはローションタイプよりも塗りづらいものがあります。

●乳液・ローション・スプレータイプ
軽くて使用感がよいというメリットがあります。
一方、添加物や肌への浸透性の良さから、かぶれやすい場合があり、クリームに比べて効果を発揮する時間はやや短いのがデメリットです。
塗りムラも出やすく、均一に塗るのは実際に困難です。
特にスプレータイプは、肌に噴霧することで乾燥しやすく、また蒸発もしやすいため効果を維持しにくいです。
ただし、髪に対して(クリームや乳液を塗りづらいところ)はスプレータイプは最適と考えます。

Q3. 昨年使って余った日焼け止めは、今年も使って大丈夫ですか?

A:基本的にはおすすめできません。
日焼け止めは開封後、空気や光、温度変化の影響で有効成分が徐々に劣化していきます。
その結果、紫外線防御効果が落ちるだけでなく、酸化や変質によって肌トラブルを招く可能性もあります。

一般的に外用薬や化粧品は、開封すると雑菌が繁殖しやすくなるため、高温多湿を避けた状態でも3〜4か月以内の使用が望ましいとされています。
特に昨年の夏に開封した日焼け止めは、防御効果や安全性が保証できないため、今年の使用は避け、新しいものを購入していただくことをおすすめします。

未開封であれば、製品に表示されている使用期限内であれば使用可能ですが、開封済みは“そのシーズンで使い切る”のが理想的です。

Q4. 日焼け止めをしっかり塗れば皮膚癌のリスクを減らせますか?

→ はい。日焼け止めには紫外線によるDNA損傷や異型細胞の発現を防ぐ効果があります。
 皮膚癌は日光(紫外線)に長くさらされる部位、つまり日光露光部に起こりやすい傾向があります。
 特に皮膚癌の予防には、以下の部位の遮光対策を心がけて下さい。

・顔:額、鼻、頬、耳、下口唇など
・頭皮
・首や手の甲、前腕や足のすね

Q5. あまりに紫外線を避けると、ビタミンD不足が心配です。

→ 日本ではごく短時間、皮膚の一部が日光に暴露されることで十分な量のビタミンDが生成されます。
 過剰な紫外線を浴びるより安全です。どうしても不足しがちな場合は食事やサプリメントで補いましょう。

Q6. 日光の良い効果はありますか?

→ 骨の健康、免疫調整、睡眠リズムの改善、気分安定などの利点があります。ただし“ほどほど”が大切です。

なりません。×××

これは非常に多い質問です。
SPFは足し算できる数値ではなく、単独製品での効果を示す指標です。
SPF20と30を重ねても「より強くなる」という保証はなく、むしろ塗りムラや重ね方によっては数値通りの効果が得られません。
大切なのは十分な量を均一に塗ることと、こまめな塗り直しです。

そもそも日焼け止め製品に表記された紫外線の防御指数は、むらなく、肌に一層の膜ができるよう均一に塗った時の値です。
 日焼け止めを塗る時点での塗りムラや、汗や皮脂崩れでムラが出る場合には、表記通りの効果はありません


しみ取り治療をしていて日焼け止めの塗りムラが多いと感じる部位は、目周り外側からこめかみ、眉毛内、鼻根部です。
これらの部位には、2重3重とは初めから重ね塗りをすることを推奨しています。

Q8. 紫外線吸収剤と散乱剤はどちらが良いのですか?

→前述したようにどちらにも長所と短所があり、両方を組み合わせることで、それぞれの長所を活かすこともできます。
・紫外線吸収剤だけ:透明感があって塗り心地がよいことがメリットですが、敏感肌には刺激になることがあります。
・紫外線散乱剤だけ:低刺激性で赤ちゃんや敏感肌の方にも使いやすい長所がありますが、白浮き・きしみ・粉っぽさが出やすいなどの短所もあります。

当院ではなるべく肌に負担が少なく、高い効果を発揮し、塗り心地や白浮きしにくいような”紫外線吸収剤フリーの日焼け止めクリームのみ”を取り扱っております。


まとめ

紫外線対策は「美容ケア」を超え、肌の老化や皮膚癌を予防する「健康管理」の一部です。
SPFやPAを正しく理解し、肌質に合った日焼け止めを選ぶこと、そして物理的な対策も組み合わせることで未来の肌を守ります。

あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院では、敏感肌や赤ちゃんにも安心して使える紫外線吸収剤フリーの日焼け止めクリーム
エムディア(M-Dear®)、NOV®の一部、ビューティフルスキン®などの製品を取り扱っております。
よい日焼け止め製品に出会うまでには苦労することが多いです。

どの製品がご自身に合うか、どのくらいの防御率が必要か?など、日焼け止め製品や皮膚でのお悩みは、当院にお気軽にご相談ください。

監修医師

あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院 院長

つつみ みどり