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eczema, contact dermatitis
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湿疹は「皮膚炎」とほぼ同じ意味で使われる言葉で、皮膚が炎症を起こして赤くなり、痒みやブツブツが出る状態を指します。
日本では、湿疹の典型的な症状の推移を下記のような「湿疹三角」として表現することがあります。

急性期の症状では、皮膚が炎症で赤くやや浮腫状になる紅斑から始まり、その中にブツブツと盛り上がる丘疹が出ます。
炎症が強いと漿液性丘疹とも呼ばれる小水疱(水膨れ)を伴い、皮疹を掻くとじゅくじゅく剥けたびらんかさぶた(痂皮)となり、
最終的にダメージを受けた皮膚は皮むけ(落屑)として剥がれます。
慢性期では、苔癬化(茶色くゴワゴワした厚みをもつ皮疹)を呈したり、色素沈着(茶色くなる)や色素脱失(色が抜けて色くなる)が残ったりする場合もあります。

このように、皮膚科では湿疹は”皮疹の状態に多様性があること”、と定義されます。

湿疹には、アトピー性皮膚炎(診療メニューの”アトピー性皮膚炎の項で説明)、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、
皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、うっ滞性皮膚炎、貨幣状湿疹、手湿疹(主婦湿疹)など、さまざまなタイプがあります。

ちなみに、湿疹と蕁麻疹は全く違うものです。
原因や発症機序、治療法が違いますので、皮膚科では明確に区別して考えます。詳しくは”蕁麻疹”の項をご参照ください。


湿疹の原因は?

●外的因子:ハウスダストや花粉などのアレルゲン物質、細菌やカビ(マラセチア)、化学物質、薬剤、金属や化粧品など。
●内的因子:アトピー素因などのアレルギー体質、皮膚の乾燥や発汗、皮脂分泌の状態、健康状態など。


これらの生活環境・体質・外的刺激が複雑に絡み合い、発症します。

湿疹の治療法は?

基本的には外用剤で治療します。保湿剤で皮膚バリア機能を向上させ、ステロイド剤を含めた抗炎症作用のある外用剤を塗ります。
(最近ではステロイドが入っていない免疫調整剤の塗り薬も多くあります。)
また、痒みが強い場合は、皮膚を掻き壊す行為につながってしまうため、抗ヒスタミン薬の内服薬を併用します。
アトピー性皮膚炎では光線療法という紫外線療法や、重症度に応じて生物学的製剤の注射も保険適応です。
(詳しい治療法は、アトピー性皮膚炎の項をご覧ください。→アトピー性皮膚炎の治療|阿佐ヶ谷でアトピー性皮膚炎の治療ならあおい皮フ科クリニック

ステロイドの外用薬は使っても安全ですか?

医師の指示に従って正しく使えばステロイド外用薬は安全で効果的です。
「副作用が怖いから」と使用を控えると、かえって炎症が長引き、皮膚が硬く厚くなることがあります。
ステロイド外用剤については、適正使用の安全性を”アトピー性皮膚炎”の項に記載しております。
そちらもぜひご参照ください。→アトピー性皮膚炎の治療|阿佐ヶ谷でアトピー性皮膚炎の治療ならあおい皮フ科クリニック

湿疹はかくと悪化しますか?

湿疹は痒みが強いため、ついつい掻いてしまいがちです。血が出て痛くなるまで掻いてしまう方もいます。
しかし、湿疹を掻くとヒスタミンなどの炎症物質が増えるため、痒みが悪化します。
さらに皮膚のバリア機能が壊れ、外からの異物やアレルゲン物質が皮膚の中に入りやすくなります。
細菌感染を起こすリスクも高まります。
このように湿疹を掻くとさらに痒い物質が出てきて炎症が広がるという悪循環に陥ります。
これを防ぐには、「掻かない工夫」と「医師の治療」が重要です。

湿疹を掻かない工夫や正しいスキンケアは?

冷やす:痒みが強い時は、保冷剤をタオルに包んで短時間あてると落ち着きやすいです。
保湿:乾燥は痒みの大敵です。バリア機能が正常に保たれていれば皮膚の外からの異物が中に侵入しにくくなり、皮膚炎も起きづらいです。
入浴後はすぐたっぷり保湿しましょう。
*入浴後は急速に水分が蒸発します。理想的には入浴直後、遅くても5分以内に保湿して下さい。
*保湿剤はさらっとしたローションタイプの方が塗りやすいですが、それでは効果が長続きしません。
 乾燥肌の方は特に軟膏など油分を多く含むタイプの保湿剤を使用して下さい。
*保湿剤を薄く塗るよりも、たっぷり塗る方が効果が高いことが分かっています。
汗をかいたらすぐに水やぬるま湯で洗い流す:汗は湿疹の原因となります。
汗をかきやすい部位や、間擦部とよばれる首、肘の内側、膝の裏側は特に注意して下さい。
汗は体中に年中かいています。冬でも汗は出ています。
寝ている間にかいた汗や運動後の汗はすぐに水で洗い流しましょう。
起床後にシャワーが難しい場合は、着替え前に濡れたタオルで間擦部を軽く洗いとるとよいです。
冬は電子レンジでホットタオルにして間擦部や背中、前胸部を洗いとると、湿疹・ニキビ予防に効果的です。
*汗拭きシートは皮膚が弱い方や敏感肌の方には刺激になることがあります
汗拭きシートに含まれる成分のうち、アルコール(エタノール)は揮発性が高く、皮脂や水分も奪います。
界面活性剤(洗浄成分)は、汗や皮脂を拭き取りますが、角質層のバリアも削ります。
香料・防腐剤は肌荒れやかゆみの原因になることがあります。
汗拭きシートよりも、水やぬるま湯でこまめに洗い流し、保湿しましょう。

衣服選び:なるべく通気性の良い素材(綿や吸湿速乾素材)を選び、汗をかいたら着替えましょう。
       服のタグや縫い目の刺激を減らして下さい。
*最近よく見かける速乾性のものより、綿など汗をしっかり吸い取る素材の方が肌には優しいです。
*特に直接皮膚に接する部分(肌着)は綿の面積が広いものをおすすめします。
   
悪化因子の回避:乾燥、汗・摩擦、ストレス、睡眠不足、アルコール・香辛料のとり過ぎ、刺激性化粧品など原因の除去が必要です。


湿疹はボディソープや石けんで洗わない方がいいのですか?

アトピー性皮膚炎や湿疹の症状が強い方は、石けんやボディソープで使用しない方がいいと思われていることがありますが、
”洗浄力がマイルドな泡の弱酸性ボディソープ”を使って肌を優しく洗うのをおすすめします。
入浴から時間のたった皮膚は、皮脂や汗、外から付着した異物、雑菌などで覆われています。
熱めの湯は避け、適度な温度のお湯で皮膚をやさしく洗って下さい。



肌は”弱酸性”に保つことが理想的です。
皮膚表面の角層の細胞間脂質や天然保湿因子(NMF)は、弱酸性で安定し、
pHがアルカリ性に傾くと、脂質や酵素の働きが乱れ、乾燥や刺激に弱い肌になり、痒みも起こします。
また、皮膚の常在菌は弱酸性で最も活動し、それ以外のpHでは悪玉菌の方が活発になります。

石鹸はアルカリ性であり、タンパク質、皮脂汚れをよく落とします。
低刺激の石けんを選んだり、皮膚全体ではなく皮脂の分泌が多い場所だけ石鹸を使用したりするのがおすすめです。

皮膚の汚れは刺激がないように洗い落とし、シャワーや入浴後はすぐに保湿剤を塗って下さい。

湿疹は自然に治りますか?

軽い場合は数日で良くなることもありますが、繰り返し、慢性化することが多いです。
掻き壊すと色素沈着や皮膚のごわつき(苔癬化)が残ることもあるため、病院での早めの治療が推奨されます。

かぶれ”のことです。湿疹の一つです。赤み、水膨れ、黄色いかさぶた(黄色痂疲)の症状が出ます。
原因物質により、大きく2種類に分かれます。

刺激性接触皮膚炎:刺激のある物質に触れることにより、初回の接触でも皮膚が赤く反応します。
アレルギー性接触皮膚炎:触れる機会が何度かあるものに対して、皮膚の中の免疫担当細胞が敵とみなすと反応して記憶します(感作)。
 さらに接触の回数が重なると突然赤い皮疹を発症し、その後は原因物質に触れる度にすぐに皮疹がでるようになります。
 ニッケルなどの金属や植物、シャンプーなどの洗浄剤、白髪染め、化粧品、植物などが原因となることが多いです。

接触皮膚炎(かぶれ)というと「かゆい赤みが出る皮膚症状だけ」と思われがちですが、アレルギー性接触皮膚炎
全身症状がでる場合があるため、注意が必要です。


全身性接触皮膚炎とは

特定のアレルゲンが皮膚だけでなく、口からや注射、吸入などで体内に入った場合に、全身に強い湿疹が出ることがあります。
例えば、金属のニッケルアレルギーの方がニッケルを含む食べ物を摂取すると、全身に湿疹が出たり悪化したりすることがあります。
このような状態を 全身性接触皮膚炎 と呼びます。シイタケ水銀なども有名です。

アレルギー性接触皮膚炎の全身症状

原因物質に触れていない部位の皮膚にも、強い痒みを伴う赤みや腫れが広がることがあります。
発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなどを伴います。
・まれですが、粘膜や呼吸器症状(口の中の腫れ、喉の違和感咳、喘鳴、息苦しさ)が出現することがあるので注意が必要です。
消化器症状(全身性接触皮膚炎の場合):アレルゲンを食事で摂取した際に、腹痛・下痢・吐き気などを伴うことがあります。

特に注意が必要なケース
金属アレルギー(ニッケルなど) → 食品に含まれる場合があり、食べると全身に湿疹が出ます。
ゴム(ラテックスアレルギー) → 医療器具や手袋で接触 → 重症例ではアナフィラキシーに進展することもあります。

接触皮膚炎は血液検査では原因を特定できません。パッチテストで判定します。
『アレルギー』の項でもご説明しておりますので、ご参照ください。→アレルギー治療|阿佐ヶ谷でアレルギーでお悩みならあおい皮フ科クリニック


脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹)とは

どんな病気?
皮脂の多い部位(頭皮・眉間・鼻周囲・耳周り・前胸部)に、赤みと細かいフケ様の落屑黄色いかさぶた(黄色痂疲)を伴う皮膚炎です。
痒みはあっても軽いことが多いです。マラセチアや皮脂・体質・ストレス・季節変動が関与します。
脂漏性皮膚炎にかかりやすい人は?
皮脂分泌が多い思春期以降の方:顔(Tゾーン)、頭皮、耳周囲、胸部などに多くみられます。
男性にやや多い:男性ホルモンが皮脂分泌を刺激するためです。
・免疫力が低下している方
・ストレスや睡眠不足、生活習慣の乱れがある方:これらはホルモンバランスや皮脂分泌に影響します。
マラセチアが多い人:マラセチアはにきびの原因ともなる皮膚常在菌(誰にでもいる)のカビです。
           皮脂を好み、炎症の引き金になります。
治療は?
・マラセチアの繁殖を抑えるために、抗真菌薬(カビの薬)を外用します。
・赤みや炎症が強いときはステロイドの外用剤を用います。

乳児脂漏性皮膚炎とは?

生後2〜3週間〜数か月の乳児によくみられる症状で、頭皮がカサカサしたり、黄色のかさぶた(黄色痂疲)ができたり、
眉間、耳の後ろ、首のしわに赤くカサカサした皮疹が発生します。
バリア機能が未熟な皮膚に対し、皮脂分泌が活発になる時期にでやすいです。
乳児の場合は自然に軽快することもあります。かさぶたが厚い場合は医療用のオリブ油を用います。

皮脂欠乏性湿疹とは

どんな病気?
加齢・季節(冬)・長風呂や石けん過多で皮脂と水分が不足し、粉をふく・ヒビ割れ・強いかゆみを呈します。
好発部位:下腿外側(すね)、腰〜臀部、上腕外側に多いですが、全身におこります。
     あまり保湿をしていない男性の下腿(膝から下)や高齢者の全身に多いです。
治療
 ・保湿が主役:セラミド・ヘパリン類似物質・ワセリン・尿素などで全身をしっかり保湿します。
 ・炎症部:保湿に加えて、赤い湿疹箇所にはステロイドの外用を行います。
 ・かゆみが強い時:抗ヒスタミン薬を内服します。
生活ケア
38〜40℃のお湯に短時間入浴しましょう。ボディソープは低刺激性を選び、入浴後5分以内十分量の保湿剤を塗りましょう。

異汗性湿疹とは?

「異汗性湿疹」は「汗疱状湿疹」とも呼ばれ、水ぶくれのような小さな赤い皮疹(漿液性丘疹)が手や足に繰り返し出ます。
痛痒いことも多く、特に体温が上がるとき、蒸れるときに出やすい皮疹です。
汗疹に似ているため名前に「汗」とありますが、汗そのものが原因ではありません
金属アレルギーなどのアレルギー体質、ストレス、汗腺の働きの異常などが関与すると考えられています。
治療
 ステロイド外用こまめに行います。皮疹が出て2日以内に炎症を抑えられるかが勝負です。
 急性期は特に痛痒いため、ついつい掻き壊してしまったり爪をたてて痛み刺激を与えたりしてしまい、慢性化するケースが多いです。
 掻かないように抗ヒスタミン薬を内服することもあります。冷やすのも非常に効果的です。

うっ滞性皮膚炎(下肢静脈うっ滞)とは

どんな病気?
下肢静脈を流れる血液の戻りが慢性的に悪い状態が続くとむくみ赤褐色の色素沈着湿疹・苔癬化などの皮膚症状が出ます。
足首まわり〜下腿にできやすく、痒みやむくみにより下肢が重くだるく感じます。
発症しやすい人
 慢性的な下肢静脈瘤を持つ方、長時間立ち仕事や座り仕事の方、高齢者(加齢で静脈弁が弱くなる)
 肥満や妊娠経験者(下肢の血流負荷が増える)
*妊娠・経産婦との関係
  経産婦では2〜3人に1人が下肢静脈瘤を発症すると言われており、うっ滞性皮膚炎のリスクが高いです。
治療とケア
~むくみの対策と保湿が重要です。~
圧迫療法医療用の弾性ストッキングや弾性包帯で下肢がむくまないよう圧迫します。
      弾性ストッキングの着脱はかなりの力を要するため、着圧ソックスも効果的です。
下肢挙上:座るときにオットマンに足を置くなど。低い台に足をのせるだけも有効です。
長時間のたちっぱなしを回避:適度な運動(ウォーキング、ふくらはぎの筋力トレーニング)が望ましいです。
〇湿疹部にはステロイド外用保湿剤を塗ります。亀裂や二次感染は適切な創傷ケアを行います。
〇静脈疾患が強い場合は血管外科と連携し、下肢静脈瘤の治療が必要です。


湿疹では炎症が強い部分を局所的に抑えるためにステロイドの外用剤で治療を行いますが、掻いて皮疹が悪化する
悪循環を断ち切るために抗ヒスタミン薬(痒み止め)の飲み薬を用います。
しかし、そもそも皮疹が出ないように日頃から正しいスキンケアを行うことが何より重要です。

あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院では湿疹の早急な治療はもちろんのこと、原因を考えたスキンケア、治療法を
ご提案しています。バリア機能が保たれた健康的な皮膚づくり、維持を目指しています。
赤ちゃんからご高齢の方まで、湿疹でお困りの方はご相談ください。

監修医師

あおい皮フ科クリニック南阿佐ヶ谷駅前院 院長

つつみ みどり